まだまだ寒い2月の下田。今年の冬は記録的な大雪など何かと寒い冬でした。
それでも春は確実に近づいてくることをそろそろ見頃を迎える河津桜が教えてくれます。ソメイヨシノの咲く本格的な春はもうすぐそこですね。
皆さんは海の中の四季を想像したことがありますか?
海の中の春野菜
- 春風に揺れる新ワカメ
春夏秋冬と山に四季があるように、海の中にももちろん四季はあります。海辺の町、下田は山の草木に季節を感じるのと同じくらい海からも充分に季節を感じることができます。もしかしたら一年で今が一番海から季節が変わったことを教えられる時期かもしれません。
スーパーのレジ袋に一杯に入ったワカメ、メカブ、ヒジキなどの海藻。玄関から玄関へ下田の沢山の家へお裾分けとして配られます。
- 頂いたボールいっぱいのワカメ
「ワカメ食うけー?」
「母ちゃんまたワカメかよ~」
「いーから喰わっせー!」
なんて会話がそこかしこで聞こえてきそうです。
ワカメとフキと筍の煮物・ワカメの味噌汁・ワカメと胡瓜の酢の物・バター炒め・メカブ(ワカメの根の部分)のオカカ和え・ヒジキのサラダ・・・。
- 磯の香りと歯応えばっちり!メカブのご飯
春前、下田の多くの人はじっとワカメやヒジキなど海藻の口開け(解禁)の通達を待ちます。そしてある日口開けの一報が入ると冬の冷たい海の中で太陽の光を浴びて大きく育った海藻を狙い沢山の人がワカメやヒジキハンターに。採ったり、もらったり、下田の人間みんなで春の味を愉しみます。
今回はそんな下田の春の幸の中でもヒジキをご紹介します!
ヒジキと言えばコンニャク・人参・油揚げなどと煮込まれた「ヒジキの煮物」が定番ですよね。あのヒジキはまっ黒ですが採ったばかりのヒジキはオリーブ色?湯通しした時は目の覚めるような綺麗なグリーンなんですよ。
春の風物詩 ヒジキ漁
- 外浦海岸にある瀬の磯
河津桜も散り始め、日差しも柔らかく感じられる頃、僕の住んでいる海辺の下田柿崎地区ではある早朝に突然街頭に設置されたスピーカーからヒジキ漁口開け(解禁)の放送が流れます。
無骨な声が何かをがなり立てています・・最初は何があったのだろう?とビックリしたのですがよく聴いてみると磯管理組合の放送でした。こうやって口開けを知らせます。そしてそのタイミングは天気や波の状態、潮の満ち引きなど幾つかの要素を考慮して決めるそうです。
- 80歳過ぎの元気な海女さん
取材に行ったのは、「夏といえば貝の季節!下田のサザエとアワビ特集!」でもお馴染の下田から河津へ向かう途中の外浦海岸にある瀬の磯。
口開けの日に放送を聞いたお馴染の(漁業権をもった)人たちが背負い籠と小さな鎌を手に集まります。顔を合わせて今年の海草の出来、海の状態、世間話を一通りすませ意気揚々とそれぞれのポイントへ向かう姿はなんだか楽しそう!
ヒジキ漁は海の畑仕事?
- 沢山のヒジキを掻き入れる
ヒジキ漁はサザエやアワビの素潜り漁とは違い腰の辺りまで海の水に浸かりながら手に持った鎌でヒジキの根のあたりから刈り取ります。そう思うとこの磯が畑に思えてきますね。そしてこの畑を守るために磯管理組合なるものが存在するそうです。決して海の幸を自由気ままに略奪しているわけではないようですよ。
- ヒジキを持ってニッコリ!
場所は違えどなんだか稲刈りにも似た雰囲気。それにしても女性が多い!海女(アマ)という言葉があるように磯は彼女たちの仕事場です。60歳台~80歳過ぎのお婆ちゃんまで。んんん・・・なんだか平均年齢が高すぎるような気もしますが、驚くほどパワフルです。
美味しいヒジキの食べ方
- 採れたてヒジキを大鍋で茹で上げる!
さて、採ったヒジキは天日干しにして保存性を高めるか、塩茹でにしてすぐに食べるかのどちらかです。(塩茹でにして冷凍保存という手も)。今回は採り立ての一部を上の山亭さんで塩茹でにしてもらいました。沸騰したお湯に入れると濃いオリーブ色が目の覚めるような鮮やかな緑に変わります。写真には写っていませんがこの時色止めとしてオレンジとクギをネット袋に入れて一緒に茹で上げます。立ち上がる湯気と共に磯の香りが厨房中に充満します!
採れたてヒジキのサラダ
- 歯応えが美味しい!ヒジキのサラダ
自ら海でヒジキを採ってお客さんへ提供している上の山亭さんにおススメのレシピを聞いてみました。
採れたてのヒジキは何と言ってもその歯応えを楽しむのが大切とのこと。ボウルに茹で上げてざく切りにしたヒジキと新玉ねぎのスライス。マヨネーズに醤油を少し、寿司酢を一回し。サックリと混ぜ合わせて出来上がり!軽く炒りゴマを振りかけて、ツナを加えても良いかも知れません。
じゃこじゃこじゃこじゃこ・・・・。美味しい歯応え!
この季節下田のお店では採れたてのヒジキやワカメをこうやってサラダで食べさせたり、定食の小鉢やお通しとして提供されるのは珍しくありません。ぜひ下田の海の中の春野菜を味わいに来てください。