夫婦で作り出す下田ならではの和菓子
みなと橋のたもとに営む金栄堂。
とことん下田と和菓子の融合を追求する。
どこよりも港町下田を強く感じられる和菓子店。
伊豆急下田駅のすぐそばを流れる稲生沢川。
その下流付近には何隻もの船が停泊していて、いかにも港町らしい景色を臨むことができます。
その川にかかる橋のちょうどたもとにあるのが、<金栄堂>という和菓子屋さん。
立派な店構えに惹かれ、ついつい中をのぞいてみたくなります。
![外観](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/1ef3ddeff6b0d1d2f8bdb1fb58087827-6.jpg)
このお店を切り盛りしているのは金栄堂の三代目となるご主人、土屋善昭さんと奥様の貞子さん。
店の奥にある作業場へおじゃますると、ちょうどお饅頭のあんこを包んでいるところでした。
馴染みのお客さんから注文をいただいたそうで、朝からせっせとお二人で蒸し上げていたのです。
丁寧に炊いたあんこを、ひとつずつ手作業で包んでいきます。
「二人しか手がないからね、あんまりたくさんは作れないんですよね。」
お店で販売しているお菓子は、すべてこうしてお二人の手で作られたもの。
シュッシュッと音を立てる蒸気と共に蒸し上げられたお饅頭は、ふっくらツヤツヤでいかにも美味しそうです。
![作業風景2](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/7a571c141156c5710ff1b04d756fe2fe-2.jpg)
![焼入れ](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/d228b5e5f5988cace1c33dc899750fff.jpg)
![あんこ](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/0b59135392bf82c526c2fe999a010f09.jpg)
金栄堂が創業されたのは大正7年、再来年で100年を迎える老舗の和菓子屋さんです。
「二代目になる父親がとても几帳面で、お菓子の作り方を細かく書き残してくれていたんだよね。」
あんこの炊き方も、詳細に記されていたのだそう。
そうした先代から受け継がれてきた老舗の味を大切にしながら、少しづつ変えていくことも必要だとご主人は話します。
「これでいいって満足しちゃだめだよね。勉強し続けないとね。」
そうした日々の試行錯誤から生まれているのが、金栄堂ならではのお菓子の数々。
たとえば<よあけまん>というお饅頭。
このお饅頭はいわゆる酒饅頭ではあるのですが、使っているお酒にその特徴があります。
下田の日本酒好きが集まり、地元のお米を使用して静岡にある蔵元に仕込んでもらったお酒<黎明>。
使用されているお米は、減肥減農薬の有機米というこだわりの日本酒です。
その黎明をふんだんに使用したのが、このよあけまん。
水を一切入れず黎明のみで仕上げた贅沢な酒饅頭は、口に入れた瞬間華やかな香りが広がります。
![よあけまん、一個150円。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/2e56afe804abcbd0af6d5ea58b77675a.jpg)
よあけまん、一個150円。
種類豊富などら焼きにも、金栄堂ならではの個性が見受けられます。
一般的などら焼きの横に並んでいるのは、<開国どら焼き>や<海の塩バターどら焼き>という見慣れないもの。
これらのお菓子にも、下田ならではの秘密が隠されているのです。
開国どら焼きには、地元の柑橘を使用した自家製マーマレードがはさまれていて、和と洋の意外な掛け合わせが楽しめます。
海の塩バターどら焼きは、地元下田高校の生徒と一緒に開発したものなのだそう。
下田にある外浦海岸の塩を使用して、こちらも洋の要素であるバターをはさんだ珍しいひとしな。
そのほかにも地元の紫芋を使った<紫芋パイ>や、下田でとれたワカメを入れた<めざしクッキー>など。
地元の特産物を使ったお菓子は、この金栄堂の特色と言えます。
凛とした店構えとは少し印象の違う、風変わりなお菓子が並んでいるこの金栄堂。
その謎は、ご主人が地元を思う気持ちにありました。
![開国どら焼き(左)海の塩バターどら焼き(右)各180円。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/fed830919ad04474785a65d5d2e741b3.jpg)
開国どら焼き(左)海の塩バターどら焼き(右)各180円。
![初代から受け継がれてきた焼き印からは、100年という歳月の重みを感じます。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/4d952867c0f0b3de3779a8338fbb6ff4.jpg)
初代から受け継がれてきた焼き印からは、100年という歳月の重みを感じます。
「下田らしい食材って、まだまだたくさんあるんですよね。」
金栄堂の個性をあげるとすれば、地元の特産品をうまく和菓子に取り入れていること。
自分には、先代から培ってきた和菓子を作り出す技術がある。
地元の生産者さんと協力しながら、下田らしいお菓子を生み出していきたいと話します。
生産者さんが元気になって、下田がもっと魅力的な場所になること。
そうすれば、地元に若い人たちも戻ってくるはず。
それがお菓子を通じて叶えたいご主人の願いなのです。
「下田は海も山もあって、食べものも人も豊かなんです。」
生まれも育ちも下田、生粋の下田っ子のご主人。
下田が好きですか?という問いに、照れながらも「好きですよ」と。
再来年で100年を迎える金栄堂。
和菓子に隠された地元への思いが、下田というまちを照らし続けています。
![店主と女将さん2](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/bf7ce32fa7118ede0759b696e6cd54ed-1.jpg)
![紫芋パイ(左)かぼちゃパイ(右)各160円。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/cce48e3cda8967e4427b374d5b574445.jpg)
紫芋パイ(左)かぼちゃパイ(右)各160円。
![下田でとれた若布を入れた<めざしクッキー>。9枚入り550円。パリッとした食感と、ほのかに漂う磯の香り。下田土産にぴったりなひとしなです。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/fb02f1a97655108cf66ddae4f11b7ea9.jpg)
下田でとれた若布を入れた<めざしクッキー>。9枚入り550円。パリッとした食感と、ほのかに漂う磯の香り。下田土産にぴったりなひとしなです。
![どら焼き(左)黒ごまどら焼き(右)各180円。](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2018/01/58b150bb1f522f25c022cb71969c4f77.jpg)
どら焼き(左)黒ごまどら焼き(右)各180円。
![和栗のモンブランどらやき 230円](http://shimoda100.com/wp-content/uploads/2017/11/waguri.jpg)
和栗のモンブランどらやき 230円