「秘密」とは、個人、もしくはひとつの組織や団体が、外集団に対して公開することのない情報を指すコトバである。

そのコトバから受ける、本来であれば暴かれてはいけない密やかな”何か”感がなんともたまらないわけであるが、さらには”基地”というこれまたワクワク感を内包したコトバが合わさったプロジェクトが東京と下田間で行なわれているという話を、ボクは今年の夏前に知った。

「こどもとおとなのひみつ基地」。

いったいその集いでは、どんなことが行われているのだろう。

そのことについて考えだすと、ボクは仕事も趣味も恋も手がつかない日々が続くようになってしまった。こんな気持ちになったのはいつぶりだろう…。因みに、最後に挙げた”恋”に関しては、ボクはれっきとした妻帯者なので、別に手につかなくてもかまわないのです。恋を超えた愛ある家庭をもっているので。てへ。

今はとても便利な世の中なので、インターネットで検索してみると大体のことは調べがつく。例えば、下田のことを知りたければ、「伊豆下田100景」で検索をかけてみればよい。きっと下田の観光や、飲食や、宿について期待以上の十分な情報が得られるはずだ。

蒸し暑い夏の夜。妻と娘が寝静まってから、静かにパソコンの電源を入れて、”こどもとおとなのひみつ基地”と”下田”というワードを入れてこっそりと検索をかけてみた。

なになに…。

2015年末にこのプロジェクトの構想が始まり、2016年からすでに2回イベントが開催されているとな…。下田に住む人たちと、東京を中心とした首都圏に住んでいて下田を愛している人・恋している人たちの交流の場であるとな…。そして今年2017年の夏にもイベントが開催されるとな…。

これは参加するしかない。

例え、仕事が繁忙期で自分の顔とマインドがゾンビ化されていようとも、この密やかな集いの全貌を明らかにしなければいけない。ボクは勝手にそう固く心に誓って、「参加します」という強い意志を込めたメッセージをプロジェクト首謀者に送信したのであった。

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前日の夜の天候がおもわしくなく、当日のイベント開催を結構な雨男である僕が不安視していた8月19日。蓋を開けてみれば、開催時間に近づくにつれて、空は青々と鮮やかさを増していき、太陽の光がまぶしく感じられるようになっていた。つまり一言でいうと、快晴ということです。

 

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荷物をまとめて、集合場所である下田市吉佐美にある舞磯浜へ。ここはサーフィンのメッカとして有名な吉佐美大浜海水浴場に隣接された位置にありながら、プライベートビーチ感もたっぷりな場所。小さい子供たちが磯遊びできるスペースもある穴場スポット的雰囲気の味わえるところで、ここをピックアップするとは、さすがはひみつ基地。

 

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海風にバタバタとなびく、ひみつ基地の旗が見えてきたら、いよいよプロジェクト潜入気分が高まってきました。我が娘はそんな父親などお構いなしに、さっそく砂遊びに夢中になっています。

開始時間になったら、今回参加される下田の人たち&東京のみなさん全員集合。今回は共に5家族ずつの参加。総勢30人以上の大人や子供が「おとなとこども」になって楽しむ半日がいよいよスタートです。

まずは自己紹介&他己紹介タイム。初対面同士の方もいるのでちょっとした緊張感もありつつ、みなさん、サクサクとテンポよく紹介をこなしていきます。この時間帯はさすがにおとなの皆さんがリード。それぞれの下田への思い入れや、イベントに対する期待感が感じられて、楽しく聞くことができました。

今回のイベントでは大きく3つの企画があって、まずは舞磯浜での海遊び&貝殻あつめ。その貝殻は夕方からのワーク「マリンキャンドルづくり」で使用します。そして、最後はバーベキュー。このイベント事を半日で行うので、結構アクティブ。楽しさてんこもり、です。

そういうわけで「まずは貝殻を集め終わってから、水遊びをしようねー」と2歳の娘を諭すボク(45歳)。

 

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娘はどこからか棒を拾ってきて、砂浜をざっくざくと掘り漁りながら、貝殻を自分に「これー」「(貝殻)あったよー」と声をかけてきます。謙虚に言わせていただきますが、とてもかわいいです(親バカ)。

 

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ある程度、貝殻回収の目処がついたら、小さい子供たちが遊ぶのに超最適なスポットへ移動。おとなもこどもも関係なく、いっしょにたのしくみずあそびをしています。そらはとてもあおく、たいようはサンサンとかがやき、みずはちょっぴりつめたいけど、とにかくきもちよいです。あれ、文章もなぜだかひらがなが増えてきちゃったよ。

 

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水がキラキラとかがやく中で砂遊びに夢中な娘。時間になっても「まだ遊ぶー」とニコニコ楽しそうにしている表情がとても印象に残りました。

約2時間近く舞磯浜で遊んだ後、シャワーを浴び着替えを済ませて、マリンキャンドルづくり&バーベキュー会場の民宿へ。自分は、とにかく「抱っこー、抱っこー」モードの娘と荷物を抱え、徒歩で10分ほど移動。暑かったこともあり、すっかり死亡状態に突入したことは言うまでもありません。

 

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ひみつ基地の旗が見えてきた! 少しずつ、涼しげな優しい風に変わっていく夕方のひと時を感じながら、しばし休憩。下田の夏、体感しまくりです。

 

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いよいよ、今回のワークショップであるマリンキャンドルづくり開始。今回はジェルキャンドルをつくる、とのことで、グラスと2つに分けられたジェル、キャンドルの芯などが参加者全員に配られました。

 

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今回のイベントの参加者でもあり、キャンドルアーティストでもあるあさみ先生。彼女のていねいな説明を聞きながら、各々作業を進めていきます。海ではしゃぎすぎて明らかに疲れが見える娘ちゃん。思うがままに自由に作業をしているのはいいのですが、無謀な動きが多々あるのでそれをフォローしながらの我がキャンドルづくり。正直いうと、けっこうハードです。おとなって、楽しいだけじゃ生きていけないのね。

 

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自分のキャンドルづくりの途中経過。ガラスの中心部に芯をつけて、その周りにはブロック状にしたジェルをつけています。そのジェルの外側に海で拾ってきた貝殻などを配置。この時点では、我ながらなかなかの出来、とか思っていたのですが…。

 

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今回は(基本的に)2層に分けて、キャンドルに色をつけていきます。各々が塗料や香料をチョイスしたら、あさみ先生の元へ行って、ジェルを溶かしてもらいます。わらわらと生徒たちが集う中、さまざまな質問に答えながら、ジェルを溶かし続けるあさみ先生。その手さばきは、まるで女神のよう。溶かしてもらったジェルと、塗料や香料を割り箸で混ぜ合わせる着色の工程を2回繰り返して時間をおくと、さあ、ジェルキャンドルの完成です。

 

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仕上がった参加者さんたちのジェルキャンドルの数々。透明感と小さい粒状の泡がホントにキレイ。青系の色で作られたキャンドルは、ホントに海の中の世界の1シーンが描かれているようで、正にマリンキャンドル!な魅力いっぱいです。

 

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一部のスタッフさんたちは一足先に、今回の会場である民宿の庭でバーベキューの用意に勤しんでいました。そこにキャンドルづくりが終わった人たちがどんどん合流していき、「ひみつ基地」の楽しげでにぎやかな雰囲気が増していきます。

 

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次々と焼きあがっていくウインナーやお肉たち。さあ、食べろ、食べろ。

 

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こんなにたくさんのサザエさんが。さあ、食べろ、食べろ、おとなたち!

ビールとすごく相性が良くて実に美味! 自分がサザエを「美味ー」とモグモグ頬張る横で、娘がひたすら金目鯛をパクパク口にしていたのを見た時に、「ああ、ホントに下田に移住してきたんだなあ」なんてことをあらためて実感したりしました。

 

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夏のイベントといえば忘れていけないのがスイカ割り。大きなスイカが小さいこどもたちにパッカーンっと割られていきます。割れた後のスイカもこれまた、甘くてウマー。

 

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バーベキューがひと段落したら、今日のイベントのクライマックス。

仕上がったばかりのマリンキャンドルを庭へ移動させて、その全てに火を灯していきます。夏の夜の暗闇に浮かび上がるさまざまな貝殻やアクセサリーたち。

今日のワークショップが成功したことと、そのマリンキャンドルの仕上がりっぷりに、こどもたちは「わあ、キレイ!」「凄いー!」と大盛り上がり。

おとなたちはそんなこどもたちに「写真に撮るよー!」「とてもよくできたねー」と声をかけています。気づけばこどももおとなも関係なく、みんな、ニッコニコ。とにもかくにもニッコニコ。因みにその時、我が娘は畳の上でスヤスヤと夢の世界を満喫しておりましたが…。

 

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最後に我が家の二人が作ったマリンキャンドルを公開。

左が娘ちゃんの作品。一番下のベースの色を「ピンクー!」と言っていたところまでは「あらっ。2歳ながらも女子だねー」と良い流れでしたが、その後は第1層を「くろー!」、第2層を「しろー!」と言って聞かないので、なんともアヴァンギャルドな仕上がりに。右の自分のキャンドルもそうですが、2つとも欲張って塗料の配分をしくじったため、濃厚なカラーのキャンドルに。

その結果、色に透明感がないことにより、せっかく配置した貝殻たちもほぼほぼ見えない結果に。そう、我が家のふたりは無意識に結託して「貝殻たちのひみつ基地」キャンドルをつくってしまったのです。

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「あの人に会いに、あの子に会いに、下田に行こう」

そんな想いと構想からスタートしたという、こどもとおとなのひみつ基地。

きっと、そのひみつ基地は、いくら”シモダという”場所だけがとても良くても成り立たないはず。そこに関わる「ひと」と「ひと」がその意義を輝かせる大切なカギを握っているのだと思います。

僕は今回のイベントに参加させていただき、そのことを実感しました。

伊豆・下田を起点としてさまざまな場所から「こどももおとなも一緒になって本気で楽しめるひとたち」が集まったからこそ、「ひみつ基地」は最高に楽しい集いなのだと。企画者の方たちも、なんどか参加しているひとたちも、はじめて遊びにきたひとたちも、思い思いに楽しめる余地を残しながらも共有できる「なにか」があるそんな発見に満ちた居心地がよくて素敵な場所。

「下田に移住してどうですか?」「仕事がネックになるかな、と思っていて」「子供を育てる環境として下田はいい場所ですか?」

イベント中、参加していた方々と、こんな質問を受ける機会もありました。海風を浴びながら、または焼きたてのお肉をほおばりながら、リラックスしてその問いに対してやりとりをさせていただくひとときも貴重な時間でした。

これからも、ひみつ基地はイベントを続けていく予定とのこと。さらにはそのひみつ基地の本部となるであろう拠点探しもしているとのこと、です。

気になった方は、ぜひオフィシャルサイトをチェックしてみてくださいませ。きっと”シモダ”をもっと好きになれるヒントがそこにはあるはずです。

http://shimodakichi.tumblr.com/

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明山真吾(あけやま・しんご=アケシン)

1972年、東京都中野区生まれ。
サラリーマンとして慎ましく人生を歩みつつ、90年代から2016年まで都内にてUK・USロック&ギターポップ / 渋谷系DJとして活動。音楽に関わるディスクレビューやライブレポなどのライター活動も並行して行なう。 2016年2月に下田に移住。仕事と子育て、下田の街中散歩を満喫する日々。
趣味:音楽 / カメラ / 低山登り / 団地チェック / 読書

サイト“A CHANCE MEETING” : https://akeshinmooka.themedia.jp