ほぼ毎回のようにこの連載、略して「下僕」にて、己をのうのうと”シティボーイ”と括るくらい、生粋の東京生まれ東京育ちであるわたくし。

ですが(今頃)、実際のところ”シティボーイ”というよりも、”トーキョーボーイ”というのが正しいのでは…と、ふと気づき、思わず自宅の壁に頭をガンガン打ちつけたい衝動に駆られたことは、ここだけの話にしておきます。

ただ、一言で「東京」と言っても、わたくしの場合、ずっと同じ場所で生活をしていたわけでありません。実はわたくし、東京砂漠を結構彷徨っていたのです。

そんなわけで、今回の下僕は、東京での数度の転居から下田への移住についてのお話。

 

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30歳ぐらいまで、わたくしは深く根を張るかのように東京都中野区で過ごしていました。が、そこからの10数年、気づけば半年から2年毎に引越しを繰り返す、転居ジャンキーと化しておりました。

その移り住む理由というのが、大まかに言うと”仕事と恋愛”と集約できてしまうのが身も蓋もなくて、無念なところでございます。「これでは小説にもなりやしないよ…」と、思いましたが「いやいやそうでもないかも、意外とドラマティックなあれこれもなくもないし…」と、いきなり移住連載を恋愛連載に変えてしまうのもありかも…。

そんなふうに微妙に揺れ動く、おじさんゴコロ。皆様、ふと気づいたら「彼女が僕を下田に呼んでいた」とタイトルが変わっている可能性もあるので、ご注意くださいませ。

話が脱線しました。さて、中野区→小平市→川口市(埼玉県)→三鷹市→世田谷区→八王子市とコンスタントに転居を繰り返したここ10数年。大雑把にまとめると、次第に都内から郊外へと移り住んでいく傾向が見受けられましたが、振り返ってみて「あまり転居に失敗した…」という記憶が残っておりません。

自分は高収入を稼ぎ出すスーパーエリートサラリーマンではなかったので、当然のことではありますが、毎月確実に、預金通帳から諭吉さんが旅立っていくことになる家賃に多くを割くことはできません。

なので一人暮らしをしていた時の転居の際、下記の条件に関しては割り切るようにしていました。

 
  • 1.駅近物件であること(徒歩10分圏内)
  • 2.急行などが停まる主要駅
  • 3.商店街がある街
  • 4.新築物件
 

この条件というのは、引越をする人たちの中で大半の方が、まず優先して挙げる条件だと思います。当たり前の話ではありますが、この条件を切り捨てると、同じ家賃でもある程度、広めの部屋やキレイめの部屋を借りることが可能になってきます。

1の条件に関しては、確かに駅から近いに越したことはないのですが、徒歩10〜15分くらいの場所だと、自転車なら5分程度で行き来できるのでさほど問題ありません。また軽いウォーキングやジョグ意欲も生まれてくるので、体の健康を保つには良かったりします。

2.3に関しては、主要駅と主要駅の間にある駅の中で、自分にとって必要な店舗がある程度集まっている駅をピックアップする形を取っていました。たくさん店舗が集まっている商店街があれば安心は安心ですが、結局使うお店というのは限られてくるので。また、必要なときに都心や主要駅まわりに行くことで行動範囲が広がったりもしますし。

4は、単に新築物件というよりは築年数が多少経っていても、自分の好みに沿う物件であれば問題ないということですね。

要はマイナス要素をどう捉えるか、によって、意外と低めの賃料でも広めだったりきれい目の部屋に借りることは可能ですよ、ということですが、はてさて妻とつき合い始めてからはこの割り切りの大半は崩れ去っていくこととなっていきます。

というのも、いざ「引越先を探すよ」と妻にヒアリングしてみると転居の際、挙げてくる条件というのが正に最初に挙げた4つの条件だったわけです。

すると、その中で予定の予算内に収まる家賃で良物件というのはなかなか見つかりません。なので、最終的には、

1>3>2>4

と優先順位をつけて、賃貸物件探しをしていきました。

結果、結婚するときに引越した世田谷区では、最寄駅が京王線の芦花公園駅で、そこから徒歩5分程度で甲州街道に面しているというロケーションの物件を選択。

 

geboku6_1世田谷区の物件は自転車を乗り回せるぐらいベランダが広かったのも良い思い出

 

ここは駅まわりにはスーパーが2つあるくらいで、目立った店舗は外国人がオーナーの人気ラーメン屋と某大手寿司チェーン店ぐらい、というこじんまりとした場所。ですが、歩いて10分程度で行ける隣駅が千歳烏山駅という昔ながらの商店や近年のチェーン店が数多入り混じった場所で、区の施設なども揃っていたのでさほど問題はありませんでした。

そして、世田谷区では家賃が駐車場代も含むと月15万円ほどかかっていたので、そのコストを下げようと、ちょうど多摩市との境にある八王子市の京王堀ノ内駅から徒歩5分の14F建UR住宅の13Fの一室へ転居。

この物件の最寄駅は、京王線多摩センター駅と南大沢駅にポツンと挟まれた駅ですが、駅と連結されたスーパーや電気屋・本屋などを通りながら家路に向かうことができ、生活する上で動線的にムダがありませんでした(わたし達が引越した後、2つほど中・大型店舗がなくなり便利度は下がった模様)。また両隣の駅に行けば、アウトレットモールや映画館などの大型商業施設もあり、世田谷区のときと同じく、市の施設も揃っていたのでストレスとは無縁で日々を過ごすことができました。

この転居で家賃類は4万円ほど抑えられたので、年間でざっと50万円近く出ていくお金を圧縮。年収を50万円上げるのはなかなか簡単なことではないから、実際のところ、バカにならないですよね。

 

 13Fから眺めるこの景色、かなり好きでした。日によって様々な表情を魅せてくれたので

 

娘の出産のこともふまえてのこの転居。多少は出費の改善は図られましたが、それでも夫婦共働きで子どもを育てていくにあたり、一時保育に預けたら預けたで入ってきたお金がそのまま出ていくため、どうにも支出バランスが良くありませんでした。妻は自営のグラフィックデザイナーで、基本的には家にいることが多いのでまだ救われている部分はありましたが、夫・妻共に外で働く方たちだともっと深刻な問題でしょうし、生活費のやり繰りは大変な気がしています。

そんな中、ある日。

自分が勤めていた不動産会社を退職した際「次に何をしようかな。別に東京に固執しなくていい気がするんだけど」と思っていたときに、妻のお母さんから「下田に来ればー」と半分笑い話で声をかけられたのです。

で、パッと口から出た言葉が「それもいいですねー」。

 

geboku6_3東京から下田へ移動中、海を眺める娘

 

というのも、妻とつき合い始めてから年に2・3度は下田へ来ていて、ある程度、ざっくりとではあったけれども、つかめていた部分というのはあったのです。因みに、自分が気にかけていたのが下記の点。

 
  • 1.生活する上で不便がない店舗が揃っている駅まわりである
  • 2.子供が生活する上でメリットがある
  • 3.街からデザインが感じられる
  • 4.自然が多い
 

下田はこの4点がクリアされていたので、自分としては移住する上での不安はさほどありませんでした。

1に関していうと、駅から少し離れるとやはり静かな環境となってしまうため、駅まわり自体は最低限整備されている必要は感じていました。伊豆急下田駅まわりは、東急ストアをはじめとしたスーパーも複数あるし、100均ショップやTSUTAYA・コンビニ・本屋などもコンパクトながら揃っているので、基本的な生活をする上では不便はありません。チェーン系のコーヒーショップなどはありませんが、街のいたるところにカフェや喫茶店があるので問題なし。

唯一気になった点は、男性の洋服を購入できるショップが非常に限られていることぐらいでしょうか。これに関しては、ネット購入で対応したり、三島・沼津・伊東に行ったときに購入する形でカバーすることで割り切ることに。ただ、20〜30代のときに代官山まで行って購入していたハリウッドランチマーケットの商品などを卸しているセレクトショップ「PARAISO(パライソ)」が街中にあるのはとても嬉しいですね。

2に関して。八王子に住んでいたときも、当然まわりの方からあたたかい声はかけていただいていましたが、下田では、さらに優しさを感じながら生活することができています。娘が街を歩いていれば、 まるで宝物のように可愛がってもらえていますし。 もちろん妻の地元である、という点はとても大きくて妻のご家族にはよく気を使ってサポートしていただいており、これには感謝してもし尽くせない感じでおります。あとは、八王子に住んでいたときに少し頭を悩ませていた、保育園問題もまったくストレスなく入園できましたのも大きな点ですね。

3も個人的にはすごく気にしていた部分です。街からデザインが感じられる、とはやや抽象的な物言いとなってしまいますが、一言でいうと街がきちんとアップデートされている、ということです。

結果はその時々であるにしても、街のために動いている方々がいることが感じられるというのが、自分にとっては大事でした。つまり「街が死んでいない」ということ。それは街のいたるところにあるデザイン物であったり、「下田遊戯」をはじめとした街の情報発行物の数々、そしてもちろん、今、私がここに書いている情報サイト「伊豆下田100景」といったサービスがきちんと機能していることで安心することができました。

 

geboku6_4下田の街中散策は、稲生沢川河口の”伊豆の踊子別れの跡”付近から始めることが多い

 

4に関しては年々歳を取るごとに、自然と関わる趣味が増えてきているので。それと、自然が多ければ、当然、食事も豊かで美味しいものに出会える機会が増えますし。海に関していえば日本全国区と言っていい環境なので、何もいうことはありません。あとは、低山ハイク好きの自分にとっては、下田はせっかく山々に囲まれているのにいわゆるハイキングコースといえるのが、寝姿山から高根山ぐらいしかないのが、少し寂しいかなあ、と。あと駅からすぐ近くにある下田富士。約15〜20分程度で頂上まで行ける気軽さが最高なのですが、木が生い茂っていて登りながらなかなか景色を楽しめないのがちょっと残念ではあるかも。

 

geboku6_5下田公園から眺める下田。下田富士のおにぎり型のフォルムが素晴らしい

 

こうして、ひとつひとつ丁寧に挙げていくと、ホントに幸いなことに下田という場所は、自分にとっては好条件が恐ろしいぐらいに揃っていて、今では「住めば都」どころか「住めば幸せ」モードに突入しているといっても過言ではないのです。

とはいえ、まったく課題がないわけではありません。 次回「下僕」ではそれらの課題に触れつつ、これから下田に移住を考えている方々に気にかけていただきたいことについても綴っていきたいと思っています。引き続き、お楽しみにしていただけることを願いつつ、今回はこの辺で。ぺこり。

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明山真吾(あけやま・しんご=アケシン)

1972年、東京都中野区生まれ。
サラリーマンとして慎ましく人生を歩みつつ、90年代から2016年まで都内にてUK・USロック&ギターポップ / 渋谷系DJとして活動。音楽に関わるディスクレビューやライブレポなどのライター活動も並行して行なう。 2016年2月に下田に移住。仕事と子育て、下田の街中散歩を満喫する日々。
趣味:音楽 / カメラ / 低山登り / 団地チェック / 読書

サイト“A CHANCE MEETING” : https://akeshinmooka.themedia.jp