下田らしく、自分らしく。
街中に佇む蔵造りの素敵な店舗。
伝統と個性が高いレベルで調和する。
職人が作り出す「心に残るお菓子」に出逢えるロロ黒船。
口に含んだ瞬間に驚きがある。
そんな和菓子を生み出しているのが下田にある<ロロ黒船>というお店。
たとえば<黒船まんじゅう黒(ブラック)>の包みを開けてみると、中からお目見えするのは黒々とした光沢のある饅頭。
一瞬ひるみながらおそるおそる口に入れてみると、もっちりとした皮と濃厚な黒ごまの風味がパッと口に広がり、実に美味しいのです。
ロロ黒船が創業したのは1969年。
現在は初代の山田収さんと2代目の勧さんのお二人を中心にお菓子を手がけています。
丁寧に炊かれたあんこが際立つ生菓子やきんつばなどの定番商品もの。
そして、はっと驚くようなセンスの光る個性的なお菓子。
このロロ黒船にはどうやらその二面性が備わっているようです。
黒船饅頭のような個性的なお菓子を考案しているのは、二代目の勧さん。
「ひとつひとつ、心に残るようなお菓子を作りたいんです」。
自らを「職人」と呼ぶ勧さん。
仕事中はもちろん、プライベートでもほとんどの時間はお菓子のことを考えているといいます。
東京で修行を重ねたというその腕前は<つまみ細工>を見れば一目瞭然。
個性的なお菓子の基盤には、職人としての確かな腕があるのです。
商品を考案する上で常に意識しているのは、<下田らしさ>だといいます。
ロロ黒船では従来の和菓子の素材に洋のテイストを加えることで、開国のまち下田を表現しています。
例えば人気の商品「黒船やきポーハタン」がそのひとつ。
カステラの生地に刻んだオレンジが練り込まれていて、あいだには酸味のあるラズベリーのジャムが挟まれています。
それを覆っているのは、ラングドシャというバターを使ったクッキー生地。
まさに、カステラという和の素材が意外な方向に導かれているのですが、一見複雑に思えるこの組み合わせが見事に一体化しているのだから驚いてしまいます。
ほかにもロロ黒船にはこんなこだわりがあります。
それは、お菓子の地方発送や卸などを一切しないこと。
ロロ黒船のお菓子は下田のこの店舗でしか買うことができません。
自分の手で生み出したものを自分の見える範囲できちんと扱いたいというこだわり。
そして、お客さんの顔が見えるところでお菓子作りをしたいという気持ちからです。
お店に立ち寄ってみると、あることに気づきます。
それは、単にお菓子を買うという楽しみ以外に、なぜかまた寄りたくなってしまうような居心地のよさがあること。
「下田らしいお菓子を食べて、お客さんに喜んで欲しい」
そうしたロロ黒船の思いが、お菓子にもお店にも宿っているようです。