下田には関西から移り住んできた、野人と名乗る人がいます。
下田の暮らしを楽しみたくて一眼レフを買ったそう。
彼は「なんで下田は長年いても飽きへんのやろ?
そんな町、そうはないと思うで」としきりに言うのです。
「下田は海しかないなんてちゃうやろ」と。
「この町の良さを見せてあげたいと思うんや」と。
ならば彼の目に映る下田を紹介してもらおう、ということになりました。
気がつきそびれてるものに、光を当てて。
懐中電灯役のカメラと一緒に、下田を探し歩きます。
#008
おーっ、怖ーっ!
高所恐怖症の僕には、雁島(かねしま)にかかる橋は難所の一つ。
でも、恐る恐る下を見る。
ぎょうさん生き物がおるんやろうなー
吊り橋の向かいにある、磯料理「辻」。
そこの店主の順ちゃんによれば、サザエはもちろん、砂地にはアサリがいるし、
季節によっては、ワカメやヒジキなんかも生えるそう。
なんか、美味そうなもんばっかりやー
順ちゃんとの会話は音楽や料理の話が多いんやけど、珍しく子供の頃の話を聞いてみた。
「よく吊り橋から飛び込んだよ!」
えーっ、あそこから飛び込んだん!?
イケイケ少年やってんなー!
「水がきれいだからね。ここ以外では遊ばなかったかも」と順ちゃん。
地元っ子はビーチより磯で遊んどるのが好きらしいのはよく聞くわー
あの吊り橋には地元っ子の思い出が詰まっとるんやなー
「店の生け簀はここの水を汲んでるよ」
下田の海水の綺麗さは、全国トップレベルで折り紙つきや!
「知ってる? 脱皮したての伊勢エビが美味しいの。ソフトシェルって言ってさ。柔らかくて足まで食べられるよ!」
ほえー!それはお腹すいてくる話や!一回食べてみたいわ!次はいつ脱皮するん!?
「どうだろね、満月の夜とかね。めぐり合えばラッキーってことで。」
月を見るときの目が変わるわー
伊勢エビは脱皮を繰り返して立派なになってくんかー
そんな話を聞かせてくれる順ちゃんはイケイケ少年からちょいワルおやじに変貌を遂げとるわー
2022-07-30