下田には関西から移り住んできた、野人と名乗る人がいます。
下田の暮らしを楽しみたくて一眼レフを買ったそう。
彼は「なんで下田は長年いても飽きへんのやろ?
そんな町、そうはないと思うで」としきりに言うのです。
「下田は海しかないなんてちゃうやろ」と。
「この町の良さを見せてあげたいと思うんや」と。
ならば彼の目に映る下田を紹介してもらおう、ということになりました。
気がつきそびれてるものに、光を当てて。
懐中電灯役のカメラと一緒に、下田を探し歩きます。
#018
今年で84歳を迎えるこの方こそが、福田稔さん、知る人ぞ知る有名人である。
外観、店内、粋なご主人、どれをとってもガウディ―顔負けや!
何べんも聞いたであろう、挨拶がわりの「すごいお店ですねー」が僕の口からも出た。
「僕は、元々東京でジャズバーやってたの。
通っていた伊豆が好きで、12年前この店を作ったの。
見て、この板壁も屋根もみんな手作りなんだよ、3年かかっちゃった」
なんやて??
3年かけた自作の店!?
25歳も若いはずの僕にこんなパワーないわーと反省。。
「僕、ジャズが好きで。東京のどこでジャズバーをやっておられたんですか?」
「銀座なんかで何軒かもってたよ。大昔、芸人から世界的に有名になった映画監督も雇ってたり。いいよね、ジャズ。」
ほんまか??
「この店を作る前、西本郷に出した店の名前が『あ✖︎だ✖︎』っていうの」
「えっ!?『✖︎さ✖︎ち』!? ちょっとウケますね、それは!」
あんみつを一口、話が弾む。
下田に店を開こうと決めたわけを聞いてみると、
「居心地よくてね。この土地に『お客さんが気兼ねなく自由になれる店』を作りたかったから」と福田さんの目が輝いた。
それいいわー、大賛成や!
初めて来たのに気楽でいられる、いい店ですわー
ちょっと気になる、視界に入る譜面台。
「楽器やられるんですか?」
「お三味をね。祭にも出てたんだよ」
と、お三味を弾くポーズをとってくれた。
下田の祭で三味線を弾くのは女性ばかりやから男三味線は珍しい!
聞くと今もお三味の練習は欠かさないそう。
はあ〜、すごいわー
刺激をいただいたお礼を述べつつ、お代を払おうとすると「400円!」とおっしゃる。
入る前から出てくまで驚かされっぱなし、こんな店、あらへんでー!
福田さん、凄おます、ほんに!
2022-11-10