下田には関西から移り住んできた、野人と名乗る人がいます。
下田の暮らしを楽しみたくて一眼レフを買ったそう。
彼は「なんで下田は長年いても飽きへんのやろ?
そんな町、そうはないと思うで」としきりに言うのです。
「下田は海しかないなんてちゃうやろ」と。
「この町の良さを見せてあげたいと思うんや」と。
ならば彼の目に映る下田を紹介してもらおう、ということになりました。
気がつきそびれてるものに、光を当てて。
懐中電灯役のカメラと一緒に、下田を探し歩きます。
#014
鍋田浜にある喫茶店「つぼや」。
この店に入り浸り初めて何年経つやろか、馴染みの店・第一号はここかもわからん。
店も気に入っとるけど、この小ぢんまりした鍋田浜がええなあ。
夏のこのビーチは地元の子の遊び場っちゅう感じ。
かと思いきや、意外と外国人のお客さんもいて大賑わい!
いつものように店主の洋子さんが淹れたコーヒーを、
いつものように常連さんたちとよばれました。
「うん?」
口にして、しばらく皆黙り込む。
「・・なんや、美味いな?」
「・・豆変えたんか?」
明らかにちがう。
飲み口がいつもより柔らかい!
待ってましたとばかりに、洋子さんがニッコリ。
落合という山あいに、うまい湧き水が出る所があるんだそうで、常連のやまちゃんが僕らのために大きなペットボトル3本分も汲んで来てくれていた。
「うまいだろ?」
「驚いてくれてよかった!」
ふたりの作戦は大成功、やまちゃんもニッコリ。
ほんまか? 水だけでこんなに違うもんかいな??
あれこれ考えたけどまあええわ、
美味いコーヒーといつもの顔が並べば幸せや。
後日、湧き水を汲みに落合へ。
稲梓の鉄橋をくぐり抜け、舗装道路の終わり部分にこの湧き水はあります。
そうや、これでめっちゃうまいご飯炊いたろ。
2022-09-30