下田には関西から移り住んできた、野人と名乗る人がいます。
下田の暮らしを楽しみたくて一眼レフを買ったそう。
彼は「なんで下田は長年いても飽きへんのやろ?
そんな町、そうはないと思うで」としきりに言うのです。
「下田は海しかないなんてちゃうやろ」と。
「この町の良さを見せてあげたいと思うんや」と。
ならば彼の目に映る下田を紹介してもらおう、ということになりました。
気がつきそびれてるものに、光を当てて。
懐中電灯役のカメラと一緒に、下田を探し歩きます。
#028
いつもは朝日を撮りに向かう爪木崎。
けど、天文少年だったころが懐かしくなって、どうしても天の川を撮りたくなった。
満車???
夜中か朝か、意見の分かれる午前3時。
爪木崎の駐車場は車で一杯。
ここには年に100回以上来とるけど、こんな駐車場を見るのは初めてとちゃうかー
今夜は新月、週末やし、みんな星空が目当てやろな。
灯台につくと驚いたでー
所狭しと三脚付きのカメラが並んどるやないかい!
「星空の写真を撮りにきたの?」と女の子に聞いてみる。
「タイムラプスです。一度ここで撮ってみたかったんです」
そう言って、またすぐスマホの世界に戻って行った。
よう考えたら、早回しの動画を撮影するタイムラプスはカメラ任せ。
撮影が始まったら後は何にもすることないんかー
たしかに面白いもんできるけど、やろうとは思わんなー
目で見て、今や!という心が動いた瞬間にシャッターを押したいで!
自分の感覚でうまく撮れた方が嬉しいちゃうかな。
灯台は人混みやから九十浜側の海岸へ。
ここは相変わらず人がおらんなー
ひときわ明るい金星が、淡いビーナスロードを敷いとる。
金星と灯台と天の川、空も海もキラキラや。
時々、なんでそんなに爪木崎がいいの?と聞かれるけど答えに困ってしまうなー
ただただ風景として大好きやけど、気分が解放される場所という感じやろか。
スマホにとっての充電器みたいなもんで、ここにくれば僕自身が満タンになれる、人生で欠くことが出来ない場所なんや!
と言ったらオーバーに聞こえるやろか。
ただ僕はそんな場所を見つけられてラッキーな人間かも知れん。
下田に縁があってここを見つけて、すっかり離れられんわー
この季節は高校卒業した若者が下田を離れていくけれど、みんなワクワクと不安が入り混じってるやろな。
彼らの満タンになれる場所は下田のどこやろか。
新しい土地でも自分が充電できる場所を見つけるんやでー
何かと仕切り直せる春はええな。
僕もこの一枚をラストにして、また新しい毎日を探そうと思うわー
みんな起きて見に来てみー、下田は綺麗やでー
2023-03-30